THE CLUB ではグループ展「Defacement」を開催いたします。
Defacement ― 「破壊」や「汚す」という行為や、何かの「介入」によっ て元々の意味に新たな意味を加えたり、上書きして、価値を再評価する こと。
本展覧会では、ニューヨークを拠点とし、過去に40以上もの展覧会を手が けてきたアマンダ・シュミットをゲストキュレーターとして迎えます。アー トを通して今の現代社会が抱える問題を見つめなおし、力強いメッセー ジを発信し続けている彼女は、2017 年に「TIME Magazine」の「Person of e Year」の一人にも選ばれ、社会派の若手キュレーターとして注目を 浴びています。
50 年代後半にアスガー・ヨルンやギー・ドゥボールらを筆頭に、膨らむ 資本主義経済による大量消費社会に反抗し、その後の芸術や社会理念に 大きな貢献をした前衛グループ「シチュアシオニスト・インターナショナ ル」。本展覧会ではそのメンバーであった画家のジャクリーン・デ・ヨン グや、量産されるシルクスクリーンを用いて価値という概念を疑問視した アンディ・ウォーホル、また ゲルハルト・リヒターのオーバー・ペインテッ ド・フォトシリーズや、日本では見る機会の少ない海外で活躍している若手 アーティストまで、彼らの理念を受け継ぐ現代アーティスト12人による 作品を展示いたします。
今回 THE CLUB にて開催される「Defacement」では、シチュアシオ ニストらの考えをもとに、半世紀たった今でもなお絶えず膨大な量の生 産と消費が繰り返される現代社会において、破壊とはなにを意味するの か、またそこから新たな価値はどのようにして見出されていくのかを再考します。
アマンダ・シュミット
ニューヨークを拠点としているアマンダ・シュミットは、MOBIUS フェローシップを 受賞したキュレーターであり、マイアミビーチとサンフランシスコの Untitled アート フェアにてプログラム開発ディレクターを務め、Untitled, Radio と Untitled, Cinema を担当しています。シュミットは今までに 40以上の展覧会、映像上映、パフォーマンス シリーズなどを企画し、国際的に活躍しています。
1961年に、アスガー・ヨルン と ア ー テ ィ ス ト で シ チ ュ アシオニストのメンバーであったジャクリーン・デ・ヨング は、「Institute for Comparative Vandalism」と いう数巻から成り立つアーカイブ集を制作し、北 ヨーロッパの建築や文化的産物が破壊によってど う進化し、置き換えられていったのか理解しようと 試みた。この進化はシチュアシオニストらによって 再 考 さ れ 、「 D é t o u r n e m e n t ( デ ト ゥ ル ヌ マ ン ) 転 用 」 、 すなわち「現在または過去の芸術的生産物を環境 の優れた構成に統合し、状況の再構築を目指すた めの策略」という理念に発展した。そしてこれに ついてヨルンは「ある価値を壊す能力は、自分の 文化を再評価し、また新たなものに再投資する能 力であり、未来は過去を犠牲にして生み出されている。」と言及している。
「Defacement」を理解するためには、破壊という 行為が何を意味するかを理解しなければならない。破壊行為はただ物理的な破壊や損害を意味 するだけではなく、価値の喪失や冒涜、そして著 者や所有者の正当な許可無くして行う行為である ことから、横領行為とも暗示付けされる。しかし「Defacement」は破壊がもたらす意味、そしてそ こから生み出される新たな価値の再評価を試みる。「Defacement」は12人の現代アーティストに よる、「破壊」や「汚す」という行為、または何かの「介入」によって元々の価値に新たな意味が 加えられたり、上書きされたりしている作品を展示する。ーアマンダ・シュミット